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『好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~』を観た

(2016.12.20 最後まで加筆 ネタバレという概念が存在するのか謎だけど多分なし)

 

 

1 はじめに

 自分の周りのごく狭い界隈で2016年最大の衝撃作として扱われている『ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~』の続編である『好きになるその瞬間を。告白実行委員会~』が公開されたので観てきた(※)。

 この作品のコアユーザーは10代女子であり、男オタクの目には存在自体が見えないようになっている(広告すら25歳以上には表示されない)。それをアラサーのオタクが見てどうなのか。

 

 率直な感想として、オタク向け映画が豊作の年だった2016年の中でも最高の映画だった。

 

※ 17日に舞台挨拶で2回と公開初日スペシャルイベント1回の計3回、18日に舞台挨拶で3回の計6回。舞台挨拶は当然オタクだらけの特殊環境だったが公開初日スペシャルイベントは自分の周りに関しては一般的な環境に近かったと思われる。なお一般的な環境とは『客層の大半が女子小学生から女子高生で占められている状態』を指す。

 

 

2 そもそも何故前作が衝撃的だったか

 1作目が衝撃的だったのは映画の内容よりもむしろ体験型エンターテインメントとしてだった。自分の場合内容については参加した公開初日スペシャルイベント昼の部で初めて登場人物の名前を知ったレベルで全くわからず、夜の部ではキャラクターと人間関係を把握できていたからだいたいわかったという程度である。

 

 特筆するべきは映画の内容ではなくその環境である。事前にオタクですらない女子中高生しかいない現場だということを理解して参加した公開初日スペシャルイベントは自分含め声豚が多数参加していたため男女比は2:8程度であり、映画館やLVと比較してかなり有利な環境だったと思われるが、それでも無限に自撮りしてたり開演前にオタクダンスを見て「初めて見た!凄い!」とか言い出す女子中学生に包囲されているのはだいぶシビアだった。

 

 何より衝撃的だったのは30分ほど遅刻して入ってきた制服女子中学生が自分たちの4連番の横に入り、最後には号泣していたことであった。当時無職28歳の横で女子中学生が号泣している状況はあまりにも限界すぎたが、泣いている理由がその場では全くわからなかったことも難易度を上げていた。

 

 こういった場合は大抵「クソ映画だった」で終了するのだがこのときは違った。帰路で「この作品のターゲットは明らかに自分たちではない。おかしいのは自分たちの感性」「バンプみたいなもん(※)」「中高生のころ見てたら好きになってる」等の感想が飛び交い、3,4時間は映画の内容を語り合いそのままニコニコ動画まで流し始めていた。それだけの力は感じていたのだ。

 

 さらに自分にとってはターゲット層に入っていなくてもこのコンテンツに向き合わないといけない理由があった。第2弾である『好きになるその瞬間を。告白実行委員会~』の公開が既に決定していたからである。

 

 ※後に公式から「ずっ好きはアニメというより西野カナ」というパワーワードが飛び出す

 

3 瀬戸口雛(CV:麻倉もも)

 告白実行委員会はニコニコとYoutubeに上がっている動画が原作であり、それ単独で完結しているコンテンツであるため、タイトルを見れば内容も推測できる。1作目は3組の恋愛が並行する構成になっていたが、好きになるその瞬間を。告白実行委員会~』は、麻倉ももさん演じる瀬戸口雛が主役の『今好きになる。』をベースとした映画となることは明白である。

 

 詳細は省くが筆者は麻倉ももさんがデビューして以来いずれ天下を獲ることを信じている麻倉ももさんのオタクである。告白実行委員会に最初に触れたのも『今好きになる。 feat.瀬戸口 雛(CV:麻倉もも)』であり、購入した動機もお察しくださいレベルだ。

 

 決してこれまで仕事に恵まれているとは言えない(話を聞く限り事務所の方針でそうしていた可能性は多分にある)麻倉ももさんが1時間出続ける映画が公開される、それはもう信長で言えば桶狭間の戦いレベルである。麻倉ももさんのキャリアにおけるメルクマールとなることがわかっている作品に正面から向き合えずしてオタクを名乗れるのか、それならもう価値観を変えるしかないという結論になるのは必然である。オタクの感覚を破壊して女子中学生の感性を手に入れれば『好きになるその瞬間を。告白実行委員会~』を最高に楽しめるのは間違いないのだから。

 

4 公開前の状況

 『好きになるその瞬間を。告白実行委員会~』は瀬戸口雛の物語である。想定しているターゲット層はストーリーも結末まで全員知っている。瀬戸口雛というキャラクターがダメだったら全てが潰れるリスキーな選択をとったのはそれだけ自信があったのだろうし何よりも事務所が全てコントロールできるコンテンツだけにここで勝負せずにはいられなかったのだろうか、CDタイトルすら未定のまま発売2ヶ月前に発表という形にはなったが麻倉ももさんのソロデビューをこの映画に合わせている。

 

 前述のとおり麻倉ももさんはここまで代表作と呼べる作品は『アイドルマスターミリオンライブ!』程度である。普通に考えればこの程度の露出の声優がソロデビューしても大してCDは売れないのだが、同日発売の誓いぃ〜あぁ〜っ\バキバキバキバキバキバキ(肋骨を折る音)/運命ぃ〜〜!をも越える初週売上を叩き出した。理由は色々考えられるがタイアップ効果が今までのファン層による売上に単純に上積みされるという点で最強に近かったのも一因だと思う。公開後にまた伸びる可能性すらある。

 

 OP担当TrySailは規定路線だったがEDは乃木坂46からの派生ユニットによる曲となった。何故かパート分けすらされていないため、少なくとも告白実行委員会を受け入れているはずの自分の周りですら評価は芳しくなかった。

 

 結果的にこの『大嫌いなはずだった。』こそが最大の伏兵(別に伏せられていない)だったのだが。

 

5 『好きになるその瞬間を。告白実行委員会~』

 1作目を見たオタクの感想はほぼ例外なく「面白くない」であった。そもそもストーリーは2分40秒の楽曲で語り切られている。1時間の映画でメインの3組のストーリーを並行で進めたため1組の時間はアニメ1話分もない。アニメばっか見てるオタクが見て楽しめるはずがないのだ。(なお今ツイッターで頭がおかしくなっているのは大抵ここで自分の方をなんとかした狂ったオタクである)

 

 よって自分としても麻倉ももさんの主演作としては期待していたが内容には特に期待していなかった。ストーリーはどうやっても『今好きになる。』以上のものになる余地は少ないと思われた。それでも他の要素により満足のいく作品が出てくるだろうとは思っていたが。

 

 しかし『好きになるその瞬間を。告白実行委員会~』は直球少女漫画的アニメをオタクですらない10代女子に提供するという何故か存在したブルーオーシャンにふさわしい作品になっていた。オタクの間で1作目の評価が低いのはオタク視点で見ると夏樹が芋ジャークソ女にしか見えないという致命的問題のせいだった気がするので単に自分たちがまだまだだったのかもしれないが。

 

 とにかくみんなまっすぐに恋愛しているから応援したくなる。矢印が一本も交わっていないので誰かが割りを食うのがわかっているのにそれでも全員うまくいってほしい。そして何よりも雛ちゃんが最高にかわいいし虎太朗は最高にかっこいい。末永く幸せになって欲しい。初見だとアリサが意味不明だが事前か事後に『ハートの主張』を観れば4分で全てわかるので何も問題ない。幸大は本当に意味不明だからあまり気にしなくていい。

 

 そして麻倉ももさんの演技が素晴らしい(麻倉ももさんの声が1時間ずっと聞こえてくるのが既に最高とも言う)。個人的には「今日こそ恋雪センパイに声をかけよう!」と「何で虎太朗が怒るのよ?」が二強である。何度でも聞きたい。

 

 1作目は挿入歌が意味不明(『日曜日の秘密』のこと。なお『日曜日の秘密』の動画は最高なので1作目の円盤を買おう)だったが今回はそんなことはない。原曲を知っていればアレンジが流れた瞬間おっと思えるし知らなければ復習してから2回目を観るといいだろう。どのシーンがどの動画に対応しているかが理解できるはずだ。

 

6 『大嫌いなはずだった。』

 2作目の名作たる所以はエンディングの扱いだろう。1作目では構成の都合でエンディングの動画は映画の補足でしかなかったが、今回は違う。何なら映画がオープニングでありエンディングが本編と言っていいくらいだ。動画自体は事前に公開されていたが、映画を踏まえたことによりニコニコ動画では発揮できない本当の最大火力でぶん殴ってくる。特に後半は歌詞の全フレーズが必殺の破壊力である。雛ちゃんがあまりにも美しく虎太朗はやっぱりかっこいい。本当に末永く幸せになって欲しい。

 

 その後に驚愕のCパートがやってくる。映画の時点でマジで????となるが脚本プラスアルファで記述されている小説版を読むともはやわけがわからない。ぜひ映画を観た後に購入して確かめて欲しい。電子書籍でもあるが書店で買うなら児童書コーナーに行こう。HoneyWorksの胸キュン恋ものがたり!!【小学上級から ★★★】なので。

 

7 これから観るオタクへ

 告白実行委員会過激派の狂ったオタクで議論した結論として予習なしでいきなり映画館に行くのを推奨したい。するとしても『ハートの主張』を観ておくかどうかくらいである。冬休み中の昼間が特にオススメだ。初見ボーナスは人生で1回しか使えないので無駄にしてはいけない。しかも1,300円である。レイトショーと大差ないので今すぐ映画館に行こう。